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短編小説 ”モズク蟹の藻屑” 拓哉

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「僕は、介護福祉のあり方を根底から見直す必要があると言いているのです。」
「箱を作って労働力だけを求めるのではなく、介護のプロとなって、質を高めれば、自然と優秀な人材が集まるのでは無いでしょうか。」

質が伴わない介護ザービスの犠牲に成り続けている利用者さまを見ていた。
現場の悲惨さに失望して、二度と介護の仕事は嫌だと転職して行く志高かった若者たち。其れでも尚、待期老人は50万人に上っている現状がある。
だからこそ、介護のプロフェッショナルに脚光が当たっているのだ。

「あなたの情熱を、あなたの技術を、プロ意識を伝えてほしい。」と言う社長さんはいない。

人生の大先輩を敬い、尊敬し、ともに苦楽を共有して寄り添い、穏やかで幸せな人生を送って頂ける喜びを感じてこそ、こんなに素晴らしく尊い仕事は、他にはないと思うんだ。

支え合い助け合う弱者の視点で、お互いさまの精神で認め合い助け合う。人間が人間を差別したり、偏見を持って接したり、貧困を忌み嫌い、弱者から利益を貪る。
たとえ其れが人間の本質であったとしても、僕は認めない。自分の為にお金を使わない。命を惜しまず誰かを助けたい。
これは国家の問題ではなく、極めて私的な問題なのだ。





働く意味を見出せなっかった僕は、18歳からニートになった。
二十歳の記念日からフリーターに昇格。ネガティブに考える事は、持って生まれた性格だ。

父親は13歳の時のある朝、中小企業の社長さんだったが、優しい性格が災いして、連帯保証人となって自殺した。
働き者で人望もあり、家族思いの父親だった。

残された家族は、喪失感さへなく、朽ち果てるように人格が変わっていった。
人を信用しない。誠実にならない。自分の生き方を放棄したように、無関心になるのも、しかたがないことだと思った。

母はどうにか、僕の為にパートをして、レジを打っている。ただ淡々と目線を合わさずに、哀れみを浴びない様に、壊れた機械仕掛けのロボットになった。
おばあちゃんは呆けが始まり、迷惑を掛けるからと、毎日死にたいと言う。

友人たちとも人間関係が悪くなり、一人もいなくなった。人生に若くして躓いた。息を吸って、これじゃあ食って寝るだけの黴だらけの寧ろにだ。
自己破産をしたので、一家で納屋で暮らす毎日は、どこか誰も知らない優越感さへ湧いてきて、贅沢な思考停止の時間だけを満喫する。
母の苦労は解る。そのためにネガティブな問題を、一つ一つ解消して、自立する力を養いたいのだが、働いていく自信がない。
面接が怖い。人間が怖い。働くことに踏み出せない自信だけはある。だからと言って死ぬ勇気さへ出てこない。
民生委員の叔母さんだけは、安心して相談できる人だと思っていたけれど、担当をかわり、納屋でネットを見るだけで、結局、現状は何も変わらない。

それどころか、情報に支配されて、現実を確かめる術もないので、踊るだけ踊らされて、ゲームのように経験値は上がらない。
しかし、生き方にも選択肢があり、一つじゃないんだからと、変なプライドは捨てて、フェイドアウトを決め込んだんだ。

この人生はあくまでオマケ。大切なのは人生を楽しむことだと、そこだけは情けなく、ポジティブだった。
本気を出す自分が恥ずかしいような気持ちもあり、うそぶいた時もアリだと、一生懸命働いてたお父さんの仇討ちだと誤魔化していたが、ダメ人間ではない自信だけはあった。

だいたい、お説教をしたがる人にかぎって、そう言う人にかぎって、口先だけで、本当に何のために働いているのかわからない人が多いんだ。そんな優越感だけで満足できる人生なんて、現状よりも悪いと思う。

そうこうしている内に、おばあちゃんは施設に預けられた。お父さんの母親だから、優しいおばあちゃんだから、施設には時々顔を出すようになった。

まずは勇気を出して外に出る。ネットでは決して味わえない空気の香りに愕然となり、太陽の日差しで、ビタミンB1が化学変化を起こしたようだ。

おかあさんの働くスーパーは、丁度日が暮れて、人目を避けるように買い物ができるころには、生鮮食品は半額になる。
これでも処世術だけは付いてきたのだ。売り切れ寸前に先回りして、店員さんに商品をじかに手渡して、半額シールを張ってもらう淒技を会得したのだ。

普段は気にもかけない、高級食材のモズク蟹の袋が目にはいる。とてもじゃないけれど、シールを覗いてみると、どう考えても値札が間違っている。
それでも後には引けないような思いが湧いてきた。店員さんには間違いに気付くほど、口先ばかりの働きぶりだと、何のために働いているのか解らない人だと、僕には確信があった。
そして半額のシールは見事に張られた。

お父さんが一度だけ作ってくれたモズク蟹なべ。
濃厚なお味噌と、本当に甘い、伊勢海老のような締りのある艶やかな身。
フェロモンさへ漂わせる香り立つ身が、河原の生態系の頂点だと、美味しいものだけ、たらふく食べた証だと、自慢げに言っていたお父さん。

世界で一番おいしい蟹。一番美味しいお父さんのモズク蟹。

急いで家に戻り、 なべにお湯を沸かしてビニール袋を取り出すと、25センチクラスの大ぶりが二匹。
とうとう神様が降臨したのだと舞い上がっていた時に、気づいてしまったのだ。。。。_______。。。






「まだ、いきている~!!!」














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2017/03/13 (Mon) 13:34 | welforrjz #EBUSheBA | URL | 編集 | 返信

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