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「私と言う彼女」 木綿のハンカチーフ

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彼の躰、特に首筋。その耳の裏からの日向の香り。それは甘いフェロモンの香り。

私は密に誘われたアオスジアゲハ。
でもこの羽は私の物では無いの。

”彼女”の物なの。

きっと甘い蜜の中で、溺れ死んでしまうんだ。







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浅い夢に幻惑されながら、けたたましく鳴る銀色の二つのベルを強引に引き寄せ、少し突き出たスイッチを手探りで切る。
夢の中の出来事の余韻が再び押し寄せて来て、私を浮遊させ、遅刻しそうな現状であっても胸から離れてくれない。
朦朧とした意識の儘でも、眠たげな私の網膜は、引っ越し用の段ボール箱が無くなっている事を再認識した。
咄嗟に、協力なアドレナりンが放出され、少し興奮気味で寝付かれなかった脳みそは、一瞬で覚醒した。

冷蔵庫からポカリスエットを取り出して、左腕の小さなピンクの時計を何度も確認する。
食道から胃に染み渡る冷たくて、心地よい快感が押し寄せて来る。其の時、木綿のパンティーが少し濡れているのに気が付いた。
此れは、無意識の真実なんだ。気持ち悪~い!
もう着替えをする時間なんて全く残されていない。何であんな夢を見ちゃったんだろう?

慌ててドアにカギを掛けて振り向いた途端に眩暈を覚える。
強烈な太陽の光に翳した手の隙間からも容赦なく皆既日食の黒点が襲い掛かる。
私は其の時、初めて長い冬が終わったことに気がついたのだ。

少し痩せ気味に見えるけど、それは陸上部に没頭していたお陰だ。体重はそこそこあるんだだよ。腹筋が割れている美少女ってどうよ!
だから丘を越えて進んで来るローカルバスにも、平気で重い旅行鞄ごと猛ダッシュができちゃうんだ。
丸いバス停の案内板めがけて、つむじ風が走る。それは地面に降り積もった白い花びらを巻き上げるのに十分な情熱を孕んでいた。

駅前の交差点を左に曲がると、桜舞い散る春霞の並木道が何時ものように手招きしている。
通学の為に通いなれた道なんだけど、こんなに綺麗なソメイヨシノの満開を見たことが無かったような気がする。
此れはきっと、万の神々が企画した、私だけへの特別な祝福のイベントなんだ。

顔なじみの駅長さんに切符を切ってもらった時には、まだ呼吸は整っていなかった。
しかし、反対側にある上りホームまで続く、最後の試練が残されている。その天国へ向かうための陸橋の階段を見上げる。
深呼吸をして息を整え、重い鞄を引きずりながら一気に登る。新しい門出を祝うように、白いデッキシューズが眩しく光った。


初恋の彼と、最後の大切な質問を伝えてたんだけど、私の声は喧噪の中のアナウンスにかき消された。

「三番線ホーム、大分発、登り特急カモメが発車いたします。お見送りの方は、白線までお下がりください。」

そして私は、特急「カモメ」に飛び乗ったの。

恋人よ~、僕は旅立つ~、東へと向かう列車で~。
ユーミンは天才だよね。でも、誰も注目していなかったヨーロッパのアーティストの楽曲、パクってるって、それも才能だわ。
やだ、まだ手を振ってくれている、彼。心を込めて手紙を書くわ。都会の空気なんかに、絶対に染まらないから。

小さくなってゆく彼と、飛び去る街並み。それもどんどん早く。
あっという間に、故郷の思い出の景色が流れてゆき、私が感傷に浸る時間さへ与えてくれなかった。
通路に赤いチェック柄の旅行鞄を立てかけて、幸運にも座ることが許された、4両目の座席に遠慮気味に座る。
車窓から外を眺めると、モコモコと緑の雲の山々が湧きあがっているのが見えた。そして偏西風に流される様に、ゆっくりと東へと動いてゆく。

アインシュタインの相対性理論によると、列車で移動している私は、静止している彼と離れているんだから、今度会う時には時間はパラドックスの効果を受けている事になる。
彼との関係性を、トワイライトゾーンのように作ってしまうかも知れないのだ。
その一番大切な言葉を彼に伝えたかんだけど、伝える事ができなかったんだな、もう。
今現在、彼が私を追いかけて来てくれている可能性は現実的に言って、無い。だから相対性理論は適合してしまうんだ。
少し寂しいような気もするけど、現実の私を追いかけて来ているのは、あの如何わしい生理周期を司る、消えそうな春霞の満月だけなんだ。

あれ?お腹が痛くなってきた。。。唯でさへ貧血気味なのに、女の道だから、我慢、我慢。
トイレでタンポン入れなきゃ。吸収力が凄いんですよ、奥さん!


卒業式では泣かなかったな。同じクラスの友人たちが、もう少し大きな声で泣いていたら、危なかったな。
それはきっと、高校からの卒業ではなく、支配からの卒業でもなく、聴きなれたトランジスターラジオからの卒業だったんだと思う。
成績は一番よかったのに、三女だから仕方がない。ここまで育ててくれた両親に感謝すべきだとは思うけど、大学行きたかったなぁ。

ウォークマンで井上陽水を聞いて勇気付けよう。
此れから始まる人生は、きっと私が切り開いて見せる。
でも、探し物が見つからないのに、無責任に歌わないでよ。
「夢の中へ」って引き出しは、何処にあるんだろう。


後ろの席から老煙が酷い。煙草の匂いで吐き気がする。
手話か手旗信号で抗議しようか。

50代男性。家族の為に出稼ぎ。浮気願望有り。 
こんな能力使い物になんない。心理眼強すぎ~!

だから都会の空気には絶対に染まらない。私は私、何時でも不変。
不安よりも好奇心が強いって、持って生まれた性格だもの。

あの分厚い掌で筋肉痛を揉み解してくれた、お父さんが大好きだった。
でも、よかった~。近親相姦応じなくて。。。お嫁に行けない体になるとこだったよ。
中学校の修学旅行で、初めて友達から指摘されちゃったんだよな。
だって、お姉ちゃんだって一緒にお風呂入ってたんだもん、おとうさんと。
はい、弾むほどの胸など持ち合わせが御座いませぬ。

「ボールが弾むと胸が弾むわ~。レシーブトス、スパイク。だけど、涙が出ちゃう、女の子だもん。。。」

クククッ。。。  駄目よ、車内でうら若き乙女が一人で笑ったら、虐待もんだよ~。
落ち着いて、落ち着いて。深呼吸、深呼吸。。。


段々と高いビルが多くなってきたな~。都会って感じになってきちゃったな。
あんなに高い処から飛び降りたら、気持ちが良いんだろうなぁ。。。

「この大空に翼を広げ、飛んでゆきたいの~。」

クックックッ。。。  駄目だ、本当に涙が出てきちゃった。



お年頃になると乙女は、箸が転んでも可笑しくなって笑う。それが原因で、落ち着きが無いように思われる。
でも、そんな感情の起伏は、心の成長の為には必要だと思っている。
初潮が始まった時から、ホルモンバランスが急激に変わり、イライラしたり、突然泣いたりする。
でもそれは、子供の出産や、母親になる為の大切な感情の準備期間なんだ。
沢山の体験は、多くの感情を育ててくれる筈だと考えている。

躾には厳しい親だったから、就職が決まってから、その意味が解って来た様な気がする。
成績は優秀だった方だから、英検1級だってある。頭の回転の速さなら誰にも負けない。
だから第一志望のホテルオークラで仕事が出来る。 英語力を生かせる仕事だから将来は海外進出だ~!

よし、これからは「天童よしみ」で行こう!
釜山港へ~、よしみちゃん待っててね。
駄目だ!横隔膜痙攣抑えられない~!


「神戸~、神戸~。三分間の停車です。」

「お気お付け下さい、ドアが閉まりま~す。」

「次は、梅田~、梅田~。」




無機質なんだよ。。。







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「私と言う彼女」 木綿のハンカチーフ | もう一つの OneNote

2017/06/23 (Fri) 06:48 | Solar Street Light Factory #EBUSheBA | URL | 編集 | 返信

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2017/03/11 (Sat) 17:26 | qgkxmyoygi #EBUSheBA | URL | 編集 | 返信

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