Post

Prev   

【C3病棟@】  脱獄と殺戮

龍2

dS-JmO.gif


脱獄と殺戮


クリスマスイブの冷たい雨が降る。
長崎県精神障害支援センターによる顧問機関、
退院請求審査委員による問診まで後10日ほどだ。
隔離の環境にも慣れて、木村副院長との決定的な確執を除けば、
投薬をごまかしての快適な入院生活は、一月半を経過しても変わりはない。

images (4)


木村副院長に退院について聞いてみた所、本当は1年という所だが、
社会的立場から言って3ヶ月、来年の1月一杯であるそうだ。

そう長くはないのだが、社会的空白は好ましくない。
真っ当に退院をこのまま待つのも違和感を感じる。
まだ出来うる事が沢山あるのだ。しかも今夜にでも。

当直は顔なじみの村井看護師。男気のある奴だ。

「藤沢さんはどう見ても隔離されるのは犯しいと思います。」

「審査請求が通れば良いですね。」

「いや、村井さんが協力して頂ければ、もっと早く退院出来ますよ。」

「脱走の手助けをしてもらえませんか?」

「それは出来ません。私にも家族がいますので。」

「そこが問題。危険な目には合わせたくない。」

「今夜、夕食後に騒ぎを起こします。21:00です。」

「他の病棟から、夜勤者を応援の為に待機させておいてください。」

「話の意味が解りませんが。。。」

images (4)


隔離室、C3病棟、マンモス病院からの脱獄。
配膳用のエレベーター横の階段がロビーから裏玄関に通じている事は調べてある。
そこの鍵を手にすれば、国道まで3分で走り抜けられる。
タクシーに乗り家まで行けば、そこで代金を支払う。

問題は誰が鍵を持って此処へ来るかだ。
歯磨きを終えて、それを取っ手を突き出した形で左腕に絆創膏で固定する。
右手には赤色のボールペンを固定する。

隔離室で鍛え上げていたので、体が軽い。
肘打ち膝蹴りの練習を繰り返す。

「10人?何人生き残れるかな。。。」

20:30。赤のボールペンをカチカチ鳴らす。
まず、鉄格子から説得しにかかるだろう。

な~に、中に引きずり込めば良い。大切なものを、
もしくは、監視カメラを破壊しても良い。
俺の黒のサンダルには金具が付いている。

何故こんなにも心臓が高鳴る。
今を生きている実感がある。

倫理的にどうこうと言う問題ではない。
俺は死ぬまで俺で有り続けたいのだ。

体格が良さそうな一番前の奴一人を殺る。
後は太ももを突き刺して動きを止める。
足を取ろうとしてくる奴には、
膝蹴りと頚椎まで加速度を付けてボールペンを振り下ろす。

リーダー格が殺られれば、後は総崩れだ。
血塗られた鍵を奪えば良い。

21:00が来た。鉄格子からずっと離れて村井看護師が立っている。

「藤沢さん。止めましょうよ。」

「鉄の扉を開けて下さい。」

「総動員して筋肉注射をします。部屋からは出られません。」

「扉を開けても一斉には入ってこられないんでしょう?」

「先頭から殺らせて貰います。」

「藤沢さん!本当に出られなくなりますよ!」


この手の震えはリーマスの副作用なんかじゃない。
内因性の極度の興奮状態によるものだ。

根本的に闘う対象者がいなければ自己を確認出来ないんだ。
昔から、子供の頃から。。。

俺の様な一番危険なキチガイは、社会に放つ事こそが、俺の恐怖なんだ。
何をするのか解らない。躊躇なく人を殺戮できる。
そんな俺を俺は忌み嫌う。哀れだ。もはや人ではない。

今夜10名の看護師を殺戮したら、その家族は50名にはなるだろう。
その全ての罪なき人々を不幸のどん底に落としても良いのだろうか。


「村井さん。死にたくないでしょう?」

「私は大義のためなら何時でも死ねるんですよ。」

「そのために家族を不幸な目に合わせてきました。」

「早く、私が罪を犯さぬうちに人様の為に死ねないのでしょうかね。。。」



関連記事

Post Comment

  
非公開コメント