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B1病棟@其の9

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B1病棟@其の9


七月七日 金曜日 七夕の夜、酷い腰痛で睡眠が捕れなかった。
鬱の病状も相まって、これ以上の苦痛は無い現実だからこそ、
神の世界がこのまま回り続けても、きっとちっぽけな自分なんて心がちょっと痛むだけだろう。
その些細な双極性感情障害の病状なんて取るに足らないものだろう。
視点を変えて考えてみると、自分の心のバランスが取れて来た。
第三の目が見開いた瞬間だ。
時空を超え自在に自己をコントロールする。

十時三十分、心理プログラム。抗精神病薬の副作用について学ぶ。
これらはいわゆる毒であって、あらゆる副作用が起こる。
眠れなかったり、食事が食べられなかったり、毎日の生活が辛い状態などがある。
まさに今の自分の状態だ。副作用が少なくなるように処方を変えてもらおう。

午後、食事が取れない。腰痛も酷い。アトピーも悪化。体は鉛のように重い。
このままのたれ死ぬのも悪くない。再度このノートを読み返す。
至って懸命に生きている。
三時四十分、散歩に出かける。
玲子の腰ベルトのお陰で外回りを途中まで歩ける。歩いている方が腰の痛みが少ない。
久しぶりに大村湾沿いの明るい天気が見えて清々しい。
ナースセンターに戻り、慎重にカーテンの後ろに隠れて携帯電話を取り出すのと同時に、
センターの鍵がロックされた。

*腰痛&気分はどうね~?昨晩杉原君から電話があって携帯にかけてもつながらない~と心配してたんで
ヘルニアで入院してます‥と言っといた。メールはいるかもしれんけど今はほっといていいよ。
痛くて動けません‥と言っとったから。
来週免許切り替えで一回帰りますからその時電話させますと一応言っといた。
又かかるかもしれんから。七夕の願い事飾ったよ~今晩雨ふらんといいねっ!
お父さん待ってるよ(^O^)/今日は三時半からレッスンです。*

*何時もありがとう。*

*なんの!妻やしぃ!*


奴も少しは俺のことを心配してくれたのだろうか。幼馴染みで腐れ縁の中だ。
金を十万貸してから疎遠になってしまった。
夕食は七夕のすし飯で大変豪華だった。有り難く全部食べ終わる。

七時半に玲子から電話がある。どうしてるか心配になって掛けてくれた。
今までレッスンだったようだ。御苦労さんでしたと労う。
岸部シローの「後ろ向き」のテレビを見ていた話をする。
自己破産、脳出血、後遺症で地獄を見てきたと、支えてきた奥さんとが自分たちとだぶって見えていた。
自分なりに少しだけ頑張って、生のある限り生きよう。たぶんそんなものだろう。


七月八日 土曜日 七時四十分起床。また眠りが浅くとてもしんどい。
腰痛は朝はましの様だが、足の痺れが酷い。
十時から風呂に入が、その後また腰痛が悪化し、もんどりうって時をやり過ごす。
こそこそとナースステーションに行き、メールチェック。

*気分はどうね!腰痛もつらかろ~。無理は禁物!あれこれ考えないで‥ね。
お母ちゃんは今日は一時まで仕事でなんだかんだしてたら今昼ご飯食べたとこ!
庭の雑草がすごいけど湿気で蚊が多くて庭に出きらん。昨晩は電話で声聞けてうれしかったよ。
月曜日行くけんね。なんか必要なもんあったら連絡してね。f^_^;*

*今日はつらか。*

*土曜日だからね。辛さは共有!*

玲子はいつもそうである。
自分の身は当に放り出して、あの細い体に鞭打って、献身的に此方にまで愛情を注いでくれる。
有り難いと思う。強いと思う。神がかっているか又は狂気じみているかのどちらかだ。
人は愛の本質であそこまで強くなれるものだろうか。
 テレビを何気なく眺めていると、吉沢恭子が話しかけてきた。
十八から発症した双極性感情障害を患ってきたらしい。


「絶対に死んではいけないよ。
私も鬱の時に自殺未遂をして母親を心から悲しませたことがあるから、解るのよ。」


と言い涙ながらに訴えられた。


「病は気からで、苦しいのは良くわかるけど、気力も必要。ここが難しいとこなのよね。」


「主治医に言って薬一つでもガラリと気分や副作用も変わるから相談してみるといいわよ。」


と親切に教えてくれる。


「現実の生活が如何に危ういか、ストレスやプレッシャーになる事も理解できるけど、
次は何か好きな仕事を見つけるといいわよ。」


「どうにか生きているだけでも、幸せは必ずきっと来ると信じなさい。」

と笑いかけてくる。長い黒髪が綺麗な美人なのだが、どこか違和感を感じる。
誰にでも簡単にこんな話をするのだろうか。
それともこれは好意なのか。関わるなと防衛本能が働くのはなぜだろう。
距離を置きながらも色々な人生があるものだし、
生きて苦しい思いをすることも生きているうちの一時の事なのかも知れないと思った。


 七月九日 日曜日 眠りが浅く大変しんどい。今朝からデパケンが一錠になる。
テレビを一時間やっとで見る。
その後また悶々とした時を過ごす。

午後、食欲無くパンを全く食べられない。
歯磨きケースより異臭がするので、よく見たらカビが生えていた。
こんな歯ブラシで毎日磨いていた事にショックを受ける。
入浴用のビニール袋からも異臭がする。
タオルもまとめてごしごし洗う。
腰痛についても、病気の苦しみについても一行に進展が無い。
今の自分が垢まみれやカビまみれになった死骸になって行くような気がしてしょうがない。
今までの悪い処や悪い心がドッと押し寄せて来るようで、自分が崩壊してしまいそうだ。
本当にこのまま自分と言う存在は生き続けても良いのだろうか。
まだまだ苦しみも痛みも失望もきっと地獄絵のように続いて行く現実に耐えて、
生き抜く少しの力を出すくらいで良い訳がない。
本当に自分が解ってないし、懲りてないし、魂が腐っているのだ。 
 メールをチェックする為にナースセンターに入ろうとした時、後ろから吉沢恭子が駆け寄って来た。


「毎日四時にセンターで何をしてるのよ。こそこそと怪しい真似して。白状しなさい。」


「腰痛のシップを貼ってもらってるんだ。」


「必ず突き止めて上げるからね。Drも看護師もグルなんだから。覚悟して置きなさいよ。」


ナースセンターのカーテンの陰で本当にシップを貼ってもらいながら、素早くメールをチェックする。

*今日も辛い日曜日だろうな~と思ってるよ。以心伝心やもん!
龍之介は土曜日日曜日とも模試でさっき帰ってきた。今日は夏みたいに暑いね。
龍之介も休みなしでくたばってる。明日は早めに着くように行くからね。今日は功名が辻やろ?
身近な事でも楽しみを持つように‥ね。誰でもそうやってバランスとりながら生きているんだよ。(^_^)*

*そやね。*

*そうだよ。みんなそうやって生きているの。*

玲子自身、今日のメールからとても辛さが感じ取れた。ギリギリの処で踏ん張って生きている。
ただ生きているだけの自分などとは比べ物にならない位に努力と苦しさを乗り越えて生きている。
たぶん麻衣子も龍之介も想像を超えて努力して生きているのだ。
無理に無理を重ねている玲子は特に気力だけで何とか踏ん張っているんだ。
俺が這い上がって来るまで、如何にか耐えているのだ。
はたしてどう生きれば良いのだろうかと自分に問うてみる。
生きるための代償も払わず、努力もしていない。
ただですらばらばらになって、死ぬ事での現実逃避で苦しがったりするのみだ。 
夜七時に玲子から電話がある。


「絶対に私を幸せにするまで死んではいけないからね。
今のうちに悪いところを全部出してしまって、また新しく自分を作れば良いのよ。」


完全に見透かされている。


 七月十日 月曜日 睡眠は摂れたようだ。色々な夢を見る。
朝から台風の影響で大雨だ。玲子も大変だろうと心が痛む。外出届を書き込み提出する。

午前十時二十分、玲子が迎えに来る。二人で丘の上の病院を出てオペルに乗り込む。
国立病院までは二十分ほどだ。約三か月ぶりに訪れることになる。あの精神科から逃亡して以来になる。
あの時の自分とは何と変わり果てた姿だろうか。
駐車場から病院に入るまでに玲子は強風で傘を飛ばされびしょ濡れになってしまった。
整形外科で手続きをして、レントゲンを撮るが異常なし。
次回はMRIの検査をする。結果は七月十八日にでる。コンビニで蕎麦を買ってオペルの車内で食べる。
手間ばかり玲子に掛けて申し訳ない。丘の上の病院に戻って、面会室にて二人で話しこむ。


「あなたの実家ではお母様もお兄さんも酷い鬱になって、生活保護を受けているのよ。
市役所に連絡をとってヘルパーさんを頼んで来たの。何もできないからと、お米を送っていただいたわ。」


「私の母から電話があったの。市内に間借りをしているらしいけど、
大家さんと揉めて今度裁判になるから、身元保証人になってくれと言うのよ。」


「何もできないけど、墓を処分して生活の足しにする様言われたわ。」


「少なくともこんな私を本当に心配してくれる母の気持は本物だわ。」


「玲子を見ていて、何時かそう切り出すことは想像していた。玲子は自分には嘘がつけないからな。
だから何時も凛として生きてるんだろう。玲子の為に俺は憎しみや恨みを封印しよう。」


「皆私を頼りにしてのしかかって来るんだ。あなたがそうしている間に、色々と外の世界は動いているし、
龍之介の三者面談や市役所での毎月の手続きなど何でもひとりで対処して、
頼るものなど誰一人いないんだから。」


「何処まであなたに現実の事を言っても良いか分からない。
自分の身が危うくなる事は、あなたの今の鬱には悪いことだから。
ストレスで何時も頭の同じ処が痛く、一週間は続いているの。
一度病院で診てもらいたいけど、今の状態ではどうしようもないのよ。」


「寝る前に自分が今生かされている事、家族や親やすべての人に感謝してから休むようにすべきね。
視野を広く持ちなさい。」


「第三の目だな。」


そして仲尾Dr.と一緒に面会する。


「デパケン減量の効果は必ず現れるので焦らず待っていて下さい。
更に減量も考えています。今の現状では、辛抱するしかありません。
ストレスの無いように過ごしてください。七月十三日の外泊も一泊だけにして下さい。」


玲子も気力を使い果たした様子で病室から見送る。

二時半から風呂に入る。何も考えられない自分がいる。
またストレスに成りつつあるメールチェックをする。ドアがロックされる。

*今日はお疲れさん。久しぶりの外出で疲れたやろう?お母さんもお父さんを混乱させて悪かったね。
ごめんねm(__)m仲尾Doctorの焦らず最後の壁と思って乗り越えましょう‥という言葉は真実だと思うよ。
二人で乗り越えようで。辛いやろうけど乗り越えよう。(^_^)希望を持って!*

ふと思った。自分は玲子に負い目を感じているからストレスになっているのではと。
義母である美恵子しかり、画像処理会社から倒産前に逃げ出して自分を守ろうとした事しかり、
先代の社長の義父の墓の件しかり。
自分は全てを受け入れなければ、玲子を受け入れられないのではないのか。
テレビを見ていたらすぐさま吉沢恭子が駆け寄ってきた。


「藤沢さんと奥さんは不釣り合いだわ。親子かと思っちゃった。あなたヒモなの?」


「似たようなものだ。歳は二歳上だけど。」


「あなたはホストの様な性格をしていて自分しか絶対に愛せないナルシストなのよ。絶対別れるべきよ!
病気が治るはずないもの。」


「そうかもしれないけど、人間的に尊敬している。」


「処で吉沢さんはとても元気そうだけど、なんで入院してるんだい?」


「それはね‥‥、福山雅治と結婚するからよ。絶対に本当なんだから。運命なのよ。
CDで私だけのメッセージが沢山聞こえるのよ。一度でも長崎に来た時出会えたら、彼は恋に落ちるわ。」


そう言う吉沢恭子の眼球は左右に細かくそれは早く細動し、狂喜を帯びていた。
これは予感どおり、双極性感情障害に境界性人格障害が重なった極めて恐ろしい病状であると確信した。

慢性の空虚感を抱え、気分の変動が激しく、感情が極めて不安定だ。
対人関係において好き嫌いが極端で、相手の心理を読み取る洞察力がずば抜けており、
巧みな対人操作が得意で、貶したり罵ったりする。
怒りの感情が強く集団操作で相手を追い詰める。その怒りをコントロールする事は出来ない。
どうやら俺がターゲットとなった様だ。

 同室に今日から鬱病の田代さん四十七歳が入られた。控え目で好人物だ。
B1病棟に異変が起ころうとしている。対決が迫っている。鬱の仮面の下で。


 七月十一日 火曜日 やはり義母の美恵子の夢を見る。
いまの俺の心境は、義母に死が訪れるまで、残された時間の中で多くを悟り、
少しでも健全な精神で生きて逝かれることを願っている。
誰でもどんな人生においても帳尻が合うように神様は作られているのだから。
長さでは無く悟りと健全な精神になって全うできるかが問われてのだから。
無論、俺自身に投げかけた課題でもある。
人生において犯した罪は必ず精神を病む地獄絵のような罰をうける。
一生かけて償い懺悔する必要はキリスト教でもどんな宗教でも切々と問われているではないか。
髭を剃り洗顔をする。鏡の中の自分は確かに窶れてきたが、眼光の光が戻りつつある。
朝から吉沢恭子から退院後のポストカードを貰う。

*退院したら連絡下さい。早く幸せを取り戻しましょう。*

携帯番号とメールアドレスが書き込まれている。
興味津々なのだろうが思い道理に此方が反応しないことで、
憎しみの怒りで直ぐに罵ったり患者達に悪い噂を流して何処までも追いこもうとするのだ。
仲尾Dr.面会。


「さらにデパゲンを減量する検討に入っています。どうしても鬱状態がこれ以上進行するようなら、
抗鬱剤を微量処方しようと思っていまあす。これは最後の手段です。」


B1病棟に患者用の談話室があるのだが、初めて患者とのコミュニケーションを取りに行ってみる。
四五名の患者のなかには無論吉沢恭子がいた。分裂病の大久保さんと普通に会話している。
大久保さんがこんなにまともなんて初めて見る光景だ。
其々に色んな悩みを抱えておられているが、社会復帰の仕事の悩みが一番深刻であることが解った。
吉村恭子から聞いて俺の事は皆詳しく知っていた。
午後、食欲無く殆んど食べれない。酷く疲れやすい。
二時三十分からソーシャル活動のカラオケ大会があり、気力で「星屑のステージ」を歌う。
上手いのは好感が持てる福間さんと吉沢恭子だ。
そして自分が一番高い得点だったと自慢げに言ってのける彼女の人格は障害があると思われる。
カラオケで天使の少女を見る。優しく歌を囁き舞っていた。
皆にミントキャンディーを配って回っていた。
大変癒された。
自分も無理をしているのだが、寝たきりよりましだろうと思えるし、少しは歌えた事に自信がついてきた。
歌っている時は何も考えないでストレス解消になった気がする。
例によってナースステーションに入室するが、ロックするより早く大久保さんが何か喚きながら入って来た。
携帯を見られてしまった。きっと吉沢恭子の差し金だろう。
開き直ってメールチェックする。

*気分はどうですか?明日は歯医者~あさってはお父さんのお迎えなので今日は少しゆっくり過ごしました。
腰もイタカロ~?木曜日はバスクリンでも風呂に入れようかね!
今日は中三だからレッスンはハードかとよ‥でも母ちゃん頑張るね(^O^)心ん中で応援しとって!(^^ゞ*

*玲子に感謝。*

*ありがとう。かんしゃされて(^O^)/*

玲子は体力や気力が限界なんだろう。
此方に負担を掛けまいとして今回は何も内容を言って来なかった。心づかいだろう。
同室の田代さんから食欲がない事を告げたらご飯を小盛りにした方が良いと教えられた。
それにしても、此れから吉沢恭子とどう対処して行くか難題だ。


七月十二日 水曜日 六時三十分起床。今夜も眠りがとても浅くてきつい。
テレビ室で可憐な福間さんと話す。ベンチソファーで体を密着させてきた。
双極性障害で鬱のために自己入院された様だ。薬の副作用について共感する。


「午前中がとてもきついのよ。涎も出るし、頭が朦朧としているの。
退院後の事を考えるとストレスになるし、やはり偏見とも戦わなければならないでしょう?」


「藤沢さん何時もダンディーでいいわね。」


「ちょっと私の唇になにかついていない?」


と言ってそのふっくらとした唇を差し出す。
キスをせがんでいるようで、戸惑い、そっと指で触れてみた。
女子トイレに一緒に入って性交したい衝動に駆られた。


「取れたよ。」


と言うと、項垂れて長い髪の向こうからじっと此方を凝視する。
その眼つきはやはり病的なところを感じざるをえなかった。
院内の患者と接すれば接するほど、現実の世界から離れていくような気がする。
十一時からベッドに潜り込んでもんどりうって苦しむ。頭がどうにかなりそうだ。
何をしてもストレスを感じてしまう。意識がまどろむ。
仲尾Dr.面会。


「今が非常に苦しいきつい時です。今日からデパケンを更に減らしてゆきますが、
直ぐには効果は現れませんのでもう少し耐えて下さい。」


午後の食事も三分の一しか食べられない。外泊許可証を提出する。
七月十三日午前十一時から七月十四日午後二時までだ。一時半まで又もんどりうって苦しむ。
自分の精神を保って居る事さえ危うく、崖っぷちに来ている。自己の崩壊が迫っている感じがする。
仲尾Dr.再度面会。


「朝のデパケンは無くして、一日二錠だけ処方します。必ず効果が出ますので一週間経過を見てみましょう。」


三時三十分に久しぶりに散歩に出かける。外回りで1周してみる。気温の高さにビックリする。
もう外の世界は夏に移行している。草の匂い、風の匂い、トウモロコシの苗。
ナースステーションに戻りカーテンの陰でのメールチェック。

*歯医者行って来ましたよ。後少しで終わりのようです!お父さんは気分はどうですか?
薬が減った効果は少しは出てますか?明日は外泊だね。リラックスしてこなしていきましょう!
今日は四時位からレッスンです。家があまり綺麗じゃないかもしれんけど~ごめんしてね(>_<)*

*明日ね。*

今は1日の中でも気分や気力にとてもムラがある。死にそうに苦しかったり、散歩に出かけて生を感じたり。
とても気分的な事で病気が左右されていている事が解る。
焦ることはないが、少しは波の様なものが出てきて、上向きに気分が成って行くと良いと思う。
そしてまた吉沢恭子に捕まっている時に、玲子からの電話がある。


「体調はどうですか。明日朝の十時に迎えに行くからね。」


と心配してくれた。

七月十三日 木曜日 七時起床。眠りが依然浅く、昨晩は田代さんの鼾が酷かった。

十時三十分頃、玲子が迎えに来てくれた。
ナースセンターがごった返す中、外泊手続きを済ませ、院外のオペルに乗り込む。
真夏の青空、外気温の高さ、日差しの強さに現実感を感じる。
自宅に十一時頃着く。ピーチとサクラの出迎え。
玲子は昼と晩御飯の買い物にでかける。
数時間で自宅のマッサージチェアーでくつろいでいる自分が信じられない。
昼食は二人で冷やし中華を頂く。スタミナが切れた時によく食べているらしい。
ノンアルコールビールと黒ゴマ豆乳まで飲まされた。
玲子に警察署まで送ってもらい、免許切り替えの講習を受ける。
何とか講習を受けられて、二時四十分に迎えに来てもらう。
待ち時間を利用して、玲子は市役所に義母の手続きに行っていたと言う。
七月十一日に玲子から義母に電話して、元あった画像処理会社で待ち合わせをして、
貸しアパート迄行ったらしい。


「酷い生活で、外見も白髪と窶れで見間違える様だった。」


と心境を涙ながらに言って来た。


「俺も玲子に対して負い目がある。」


と正直に伝える事が出来た。


「そのままの玲子を受け入れる。」


「生活費の切り盛りは具体的に入院費や保険のやり取りで、どうにかやっている。」


現実の話を玲子とこんなに長くするのは入院以来初めてで、
自分の心境の変化と薬の減量効果だろうと思える。
大変良い方向だ。

四時から玲子はレッスンの為、二階に上がりパソコンのメールチェックとウイルスチェックをした。
そうそう、退院したら労働のリハビリに毎日トイレ掃除をさせると言われていたので、
今からするのかと勘違いをして二人で笑った。

六時に龍之介が帰って来る。お父さんが居る事に大変驚いて「わ!」と言う。
ごく自然に学校でのバトミントンをしたことや大変な暑さだった事を言う。
七時頃まで龍之介とのほんの少しの会話。勉強が大変な事や七夕の笹を取って来てくれた事など触れ合う。
七時十分にレッスンが終わり、先にシャワーを浴びさせてもらい、隅々まで洗う。
また洗濯機からの水漏れがするので、修理屋さんを今度呼ぶようにする。

夕食はうな重と冷奴にシジミの味噌汁だ。ビールで乾杯して、美味しく三人で頂く。
食事中龍之介はバトミントンがどんなに上手か自慢したりして、楽しい親子三人の食事が出来た。
その後龍之介と玲子が順番にシャワーを浴びた。
又玲子とこれまでのこのノートについて語り合った。


「本当に鬱病の時は自殺する気力さえ無いものだけど
、鬱が少し改善された時や、躁転換し始めの時に自殺が多いから十分注意してね。」


「それは本当にそうだと思う。鬱で自殺が出来るはずがない。
悩んで苦しんだ鬱状態が少し改善されて初めて其れまでの苦悩を処理するために、
ある意味で衝動的に自殺するんだろう。」


「だから何度も何度も自殺願望をやり過ごしているんだ。」


「私を幸せにするまで絶対に死んだらいけないからね。」


「‥‥‥‥。」


十時にサクラを抱っこして二階のベッドで寝る。


 
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