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B1病棟@あらすじ

B1病棟@概要双極性障害の発作によって急性期病棟(B1病棟)に強制収容された壮年男性が、そこで初めて自分を蝕む病気と向き合い、少しずつ回復して行く姿を描いた。一般には名前こそよく知られていても(躁鬱病)、実態については全くと言っていいほど馴染みがないこの病気に光を当て、その患者の葛藤と患者を持つ家族の苦悩をしっかり見据えた内容とした。語り手である“俺”がB1病棟に入院するに至った経緯と、入院中の“俺”の...
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B1病棟@其の1

B1病棟@其の1その時、軽快なエンジン音を鳴らせ、アダム・オペル・ベクトラCDX・2500は、ただ東に向かって高速道を爆進していた。ハイオクガソリンはエンジンルームで沸騰し、時速自動制御機能によりメーターは常に時速200㎞を表示している。追い越し車線を駆け抜け、前方の車にはハイビームでその存在を知らせる。自分の感覚器官の一部の様にその車体は瞬時に反応し、まるで脳細胞からのシナプスの電気信号で張り巡...
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B1病棟@其の2

B1病棟@其の2一年前、2006年、4月。玲子の母親で社長の美恵子と共に会社を運営していたが、クライアントの劇的な内製化により、下請けのコンピュータ化工業だけでは立ち行かなくなり、今後どう経営を再建するかということで親族会議を行っていた。県の経営改善補助融資を採りつける事や、保証協会のバックアップによる銀行融資や、大幅なリストラで景気回復までどうにか持ちこたえさせようと常務の俺は考えていた。社長は...
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B1病棟@其の3

B1病棟@其の3国立病院の診療による問診が長時間かかってしまった。前日から睡眠をとっていなかったので疲れてしまい、再び玲子が診察室に呼ばれている間、1階の点滴ルームで仮眠を取らせたもらうことにした。横になってもやはり眠気は訪れない。何気なくテレビモニターを眺めて病院案内を閲覧していたときだ。はっとひらめく出来事が起こる。何と、いつも見慣れた会社のシンボルマークのロゴが使われているではないか。マリー...
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B1病棟@其の4

B1病棟@其の4また携帯が鳴っている。 ディスプレイで息子の龍之介からだと解かる。「もしもし、お父さん。何やってるんだよ。いいかげんにしろよ。」かなり興奮しているらしく鼻息が荒く声が裏返っている。「いいかい。暫くお父さんは姿を隠す。お母さんの事たのんだよ。任せたぞ。」高校三年になる息子は我が家では一番正義感が強く体力もある。何かあったときには頼りになる男だ。家族を守るために、これから会社と対決して...
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B1病棟@其の5

B1病棟@其の5意識が戻ったとき、天と地がひっくり返る思いがした。俺は拘束帯で手足を縛られ、さらに腰ベルトでベッドに固定されて、ペニスは道尿の管を差し込まれているではないか。「これはいったい何なんだ。」何の説明も無く、このような人権侵害があるものであろうか。激しい怒りが襲ってくる。すでに人としては扱われない行為である。プライドも自尊心もずたずたに切り裂かれた。話し合えばわかるのに、その努力も何もせ...
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B1病棟@其の6

B1病棟@其の6個室ではじっとしていては体が訛るので規則的に筋トレをして気分転換をはかっていた。自分の精神状態はもう明らかに躁状態ではなく、急速な鬱傾向にあることが解かる。あんなに歌が歌いたかったり、英語が喋りたかったのが嘘の様に興味が湧かない。気持ちが沈みこんで、何もする気になれない。感情の動きも鈍化してしまっている。羽田Dr.によれば、躁状態が激しかったぶん鬱の波も強く出るし、薬の効き目がとて...
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B1病棟@其の7

B1病棟@其の7 六月十三日 火曜日 四十七歳の誕生日の朝を向かえる。睡眠薬を変えたせいか少し深く眠れた様な気がする。しかし相変わらずいやな夢を沢山見ることに変わりはない。夜のワールドカップは日本がオーストラリアに1対3で逆転負けをして、日本中がしんみりとした朝だ。これから午後にはそのビデオ観戦があり、玲子との面会があり誕生日を祝って頂くとは何と皮肉な日なのだろうか。何一つメデタクない日なのに。現...
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B1病棟@其の8

B1病棟@其の8六月二十三日 金曜日 六時三十分起床。外泊当日。洗顔、ラジオ体操。外泊の最終点検をする。きょうは土砂降りの雨もようだ。せっかくの外泊なのだが仕方がない。玲子もとても疲れている様子だから、無理をしないで欲しい。身支度をしてずっと待ちわびる。十時五十分に玲子が迎えに現れる。外泊書に印鑑を押して、病室を出て玄関まで行き、オペルの助手席に乗り込む。そして二か月ぶりに院外に出る。ワイパーをハ...
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B1病棟@其の9

B1病棟@其の9七月七日 金曜日 七夕の夜、酷い腰痛で睡眠が捕れなかった。鬱の病状も相まって、これ以上の苦痛は無い現実だからこそ、神の世界がこのまま回り続けても、きっとちっぽけな自分なんて心がちょっと痛むだけだろう。その些細な双極性感情障害の病状なんて取るに足らないものだろう。視点を変えて考えてみると、自分の心のバランスが取れて来た。第三の目が見開いた瞬間だ。時空を超え自在に自己をコントロールする...
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B1病棟@其の10

B1病棟@其の10七月十四日 金曜日 七時三十分、自宅のダブルベッドから起きる。昨夜は大変な暑さで寝苦しかった。玲子と朝食を頂く。おにぎりと冷奴で食欲の無い今はちょうど良い。体はとてもだるい。玲子が十時から買い物に出掛けてから、1階の掃除をしてみる。必死で掃除機をかけて無理をしてしまう。体調が崩れた。昼食に鯖寿司を二個頂く。これで精いっぱいだ。暫く横になっている。本当にしんどくなってきた。玲子に最...
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B1病棟@最終章

B1病棟@最終章七月二十二日 土曜日 六時四十分起床。朝から下痢をする。髭を剃って顔を洗う。テレビのニュースを1時間見る。全国的な大雨で死者が出ているらしい。十時二十分に風呂に入る。その後意識が飛び、寝たきりになる。午後、昼食殆んど食べる。また患者の嫌がらせに会う。1日中寝たきりになる。三時四十分にナースステーションまで何とか行き、メールチェックする。*気分を楽に持って下さい‥ね。*夕食、また食べる...
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B1病棟@あとがき

あとがきこの小説は10年前の発病当初の記録です。まだブログを始める前にコツコツと書き溜めていました。主人公の"俺"はその後二週間で退院しますが、再び躁転してB2病棟(慢性期病棟)に入院します。躁転での入院生活は楽しくて仲間も沢山出来ました。短期間の入院で終わり、社会復帰を目指して活動をし始めます。お世話になっていた会社の常務さんから誘われて入社。二年間お世話になりましたが、躁のコントロールが出来ず、...
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此れは神の領域だ

宮島は本当に素晴らしいところだ。日本の悠久の美が詰まっていて、それでいて観光的に整備されている。仁王堂から厳島神社へと回りそこで古式ゆかしい結婚式を見た。花嫁の何と美人で美しいことか。絵に描いた様な風景だ。新緑の中、紅葉谷川に沿って、すがすがしい紅葉の新緑に鹿が戯れる姿を見ながら上流に進む。ロープウエイを乗り継いで弥山山頂まで上る。途中外人さんと親しくなり、ますます英語が話せるのが不思議なくらいだ...
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